ハイチ こんにちは!6章「テモテ、そしてコンサート」−3
ハイチ こんにちは!
著者 イ·ハンソル
初版2023年8月17日3刷2023年12月20日
夢も生活の場も失ったハイチの人々に愛と希望を植え付けたイ·ハンソルの物語
上)撃たれたけど奇跡的に大きく怪我したところがなかったテモテ
下)難しい状況でパク・オクス牧師が電話して、パク牧師とビデオ通話をする教会の聖徒たち
怖かった夜
ある日の夕方だった。急に家のすぐ前で銃声が大きく鳴った。私たちにとって銃声は不慣れではなかった。ギャングのデモが本格的に
始まった時から毎日銃声を聞いたからだ。でもその日は別だった。すごく近いところで銃声が鳴った。みんな緊張しているのに、テモテが被犯壁になって教会に飛び込んできた。
テモテは私の家に住んでいる大学生で、夜明けごとにパン屋にパンを配達するアルバイトをした。福音を受け入れた後、信仰を学びたいと言って教会に入って、幼い弟たちと一緒に過ごしたのに、弟たちの学費も用意して、自分も勉強するために毎日早朝にパンを配った。夜明けにパンを配達するためには、前日の夕方に工場からパンを持って来なければならなかった。
その日もパンを持って帰る途中、教会のすぐ前で強盗に会った。強盗たちはパンとバイクを出すように言った。自分に全財産に他ならないバイクを奪われたくなかったテモテは、強盗たちといざこざを繰り広げて、強盗たちが撃った銃で撃たれてしまった。幸い教会の前だからすぐ飛び込んできたけど、床に水をこぼしたみたいに血が盛り上がった。落ち着こうとしたけど、目の前で血を見ると手足が震えて胸が落ち着かなかった。子供たちもテモテを見て悲鳴をあげた。
何よりもテモテが大きく怪我して心配だった。数日前に看護師の姉妹が訪ねてきて、涙を流したことが思い浮かんだ。病院で手術をするには医療機器を使わなければならないのに、電気と油がないから、何日も生かせる多くの患者が治療を受けられなくて病院で死んでいると言った。自分は看護師だけど何もできないからそんな人を見るたびに胸が引き裂かれるみたいで、すごく傷つくって大泣きした。撃たれたテモテを見ると、突然その話が浮かび上がり、「銃傷が深刻なのに、テモテが治療をちゃんと受けられなくて命が危険になったり、不具になったらどうしよう?」という不安感が襲った。
急いでテモテを病院に送った。子供たちは怯えた。教会の前で撃たれたということは、うちの近所も安全ではないという話だった。私は教会のドアを全部に鍵をかけて、パク・オクス牧師に電話をかけた。
祈りながら耐えてみよう
牧師はハイチの状況がどうなのか、私がいる都市の状況がどうなのか詳しく聞いた。私は何ヶ月も電気が供給されず、食材の値段が高騰して治安がとても悪くなったと詳しく申し上げた。牧師は受話器の向こうでまっすぐ祈ってくださった。
「あなたがたの会った試練はみな人の知らないものではありません。神は真実な方ですから、あなたがたを、耐えられないほどの試練に会わせることはなさいません。むしろ、耐えられるように、試練とともに脱出の道も備えてくださいます。」
コリント人への手紙 第一 10章13節
今は状況が大変で難しいけど、祈りながら耐えてみようって言ってた。その日牧師がした祈りは、私に少し前に見た月の光と同じだった。「神様はこのことを知っていたはずなのに、私たちが耐えられないことは与えないと約束したのに、そしたら神様がこの事を担わせてくれるだろう。この考えが私の心を少しずつ照らし始めた。
子供たちと一晩中祈った。驚いたことに、祈る前に心配していた心が祈りながら消えることを経験した。最初はみんなテモテが大したことないように祈ったけど、いつの間にか私たちはテモテを通して、ハイチ全域に福音を力強く伝えられるように祈った。神様が私たちの心を導いていくのを見た。
翌日の夜明け、病院に行く準備をしているんだけど、教会の前でオートバイのクラクションが鳴った。テモテだった。みんなびっくりして出てみたら、テモテが片腕に包帯を巻いたまま笑って立っていた。どういうことかと聞くと、医者が診察したら運良く銃を撃たれたと言って「銃のタマが骨にも触れず、神経にも触れず、手術する必要がなく、消毒だけして安静を取ればいい」と言ったということだ。それで一晩中輸液を打たれて、翌日の夜明けに教会に戻ったのだ。
信じがたいニュースに、テモテを忠実に守って、私たちの祈りを聞いてくださった神様を感謝して、また感謝した。私たちはその日パーティーをしているようだった。聖徒たちもテモテの知らせを聞いてみんなで祈ったのに、神様がテモテを守ってくださったのを見て、
「私たちも今難しいけど、神様が耐えられるようにしてくださる」
と言って、心が望みに満ちていた。
テモテはわずか数日で全快し、その後教会の雰囲気がすっかり変わった。