ハイチ こんにちは！６章「テモテ、そしてコンサート」−２
benappaハイチ こんにちは！
著者 イ·ハンソル
初版2023年8月17日3刷2023年12月20日
夢も生活の場も失ったハイチの人々に愛と希望を植え付けたイ·ハンソルの物語
オカイ教会のある聖徒の家で家族礼拝を捧げた後
ハイチを覆った暗雲
翌年から大統領退陣を求めるデモが起き始めた。デモは一回は起こることだから大したことないと思ってたんだけど、ギャング団たちがデモを主導すると、規模がどんどん大きくなって暴力的な組集が見えてきた。首都からオカイに来るには必ず通らなければならない道路があるが、ギャングはその道路を中心に周辺都市を占拠した後、車が通行できないように防いだ。ついに無理に通り過ぎようとする車に向かって銃を使い無実の市民が死ぬ事態まで発生した。
デモがだんだん激しくなって、南西部にある都市が全部孤立し始めた。平和だったオカイの市民もざわざわし始めた。首都で物が供給されないと資材の値段が高騰し始め、オイルレッカーも来れなくて油の供給が途絶え、油の値段が暴騰した。結局、都市に電気供給が完全に遮断され、市民の生活がすごく難しくなった。ほんの数時間で首都で油が手に入るけど、道路が封鎖されると南西の都市たちはたちまち麻痺した。ご飯を飢える人たちも増え続ける。
人々はハイチができて以来、そんなことは初めて経験するって言ってた。生まれて初めて経験する長期封鎖にみんなが戸惑いを隠せなかった。都市が封鎖されたというニュースは、大人だけが絶望に陥ったわけではなかった。ギャングは学校を探しながらドアを閉めろと脅した。大統領が辞退するまで学校のドアを開けると子供たちを誘拐して学校を燃やすと脅して、結局オカイのすべての学校が閉まってきた。一日のうちに子供たちは学校に行けなくなり、街で彷徨う子供たちが増えた。学校に行けない生徒たちを中心にまた別のデモが始まると、国はだんだん混乱に陥った。テレビとラジオは一日中ギャングの道路封鎖と学生たちのデモを特集で扱った。
続いた封鎖で都市全体が巨大な刑務所になったようだった。都市の中では比較的自由だったけど、都市の外を行き来できなかった。高騰する物価にベルトを絞めなければならなかったし、財政的にも精神的にもすごく多くの日々を過ごした。最初は学校に行かないから良かったった子たちもだんだん疲れ始めた。
オカイに住みながら事業をしていた外国人たちは、すでに首都に抜け出したと言っていた。飢えている人が多くなると強盗が多くなり、会社や店、さらには教会さえも彼らの標的になった。強盗たちはスピーカーや椅子などお金になるものを片っ端から持って行って、多くの教会が外部の人が入らないようにドアをしっかりとロックした。紛らわしい状況が続くと、人々は私たちの家族が安全な首都や近隣の国に避難しなければならないと話した。でも私たちはそうできなかった。
ずっとできるかな
私たち夫婦を親のように従う20人余りの子供たちを置いて、私たちだけは行けなかった。その子供たちに私たちが最後の避難所であり、柵であることを私はよく知っていた。精神が衰えた母のもとで6歳まで足を縛られたまま監禁された状態で暮らした子、麻薬中毒者の父のもとで毎日暴行に悩まされた子、全てを頼ったお母さんの突然の死で家と学校を失い、家族がバラバラにならなければならなかった子・・・子供たちは、私が想像し難い傷を胸に深く埋めていて、生まれたことを恨んで明日がないように生きてきた。
「なぜ問題だらけの子供たちを受けようとするのですか？」
「家でも手に負えない子供たちをあなたが何で手に負えますか？」
「余計な苦労しないで、知らないふりをしなさい。」
人々がみんな背を向けるその子供たちから、私は自分の過去を見た。世の中にぽつんと1人で取り残されたような寂しさが、もうどこに行けばいいか分からなくて、流した涙が、「えー、分からない。なるようなれ！」とつまずきながら走った私の過去の日々が子供たちから見えた。私さえも子供たちに背中を見せるわけにはいかなかった。私は訪ねてくる子供たちをもらって、ポケットをぶちまけて学校に送った。
子供たちは問題もたくさん起こした。盗みもしたり、喧嘩もしたり、怒ると物を壊したりした。都市封鎖で学校まで行けなくなると、子供たちはもっと荒くなった。感情をコントロールできなくて、一日が遠いと言って事故が起きた。都市封鎖で数多くの問題が一度に集まってくるようだった。どうしても持ちこたえなければならなかったけど、持ちこたえるのが簡単じゃなかった。
ある日、うちの子供たちさえ痛くなり始めた。長女のハヌルは全身に原因が分からないじん麻疹ができて、高熱とかゆみで体をもがいて、末っ子は炎症を起こしてとめどなく泣いた。泣きっ面に蜂で、ある女子学生は薬を一握り飲み込んで気を失い、男子生徒一人は子供たちと喧嘩して物を壊して大騒ぎした。何日も娘と息子を看護するのに疲れ果てた妻は、薬を飲んだ女子学生まで世話をして息つく暇がなかったし、私は暴動を起こす学生を落ち着かせるために一晩中格闘しなければならなかった。突然、一度にやってきた試練は手に負えなかった。
暴動を振るった男子生徒は誰よりも不遇に育った。お母さんが早く亡くなったうえに、父は麻薬中毒者で家庭の面倒を見なかった。呪術師を信じた父は、赤子を殺せば金持ちになれるという呪術師の話を聞いて、麻薬に酔って一日中子供を探しに通っていた。こいつは狂気に包まれたお父さんを見て、いっそお母さんのそばに行った方がもっと幸せだろうと思った。心の奥底から上がってくる恨みは社会に向かい、数多くの犯罪を犯した。その度に人々に見捨てられた。でも私はその子が憎くなかった。いっそ死なせてくれと言って、頭を壁にぶつけて寝転がる子供を放っておけなかった。苦しんでいる子供を握って、私たちは一晩中切に祈った。
女子学生は幸いに薬を飲み出して、医者は2時間ごとに牛乳を飲ませるように言った。妻は夕方に子供のそばで看護し、子供はみんな幸せに精神を取り戻した。すごく腹が立つことがあって、自分も知らないうちにそうしたって言ってたけど、申し訳ないと言って悲しそうに泣いた。妻は無言で子供を抱きしめて、子供はその腕の中で母を呼んだ。暴れていた男子生徒も幸い安定を取り戻したけど、自分がどんな行動をしたのか覚えていないようだった。自分がそんな行動をするたびに人に見捨てられたのに、なぜ自分を追い出さないのかと泣き始めた。
元気になった2人の子供を見て、妻と私は座り込むようにへたってしまった。体にどれだけ力を与えたのか全身がしびれたし、もし子供たちがうまくいかないかと思って緊張したせいか、脈が解けて起きづらかった。この子たちを私が全部連れていけれるかな？私たちが耐えられるかな？
世話をしなければならない子供たちが増えて、濃い暗雲が私の心に垂れるようだった。「そうやって真面目でいい子たちをもらえば、何で問題の多い子たちをもらってくらして苦労するの？」どこかでこんな音が聞こえるようだった。複雑な気持ちで窓の外を見通すけど、夜がそんなに明るくなかった。
今暗くても大丈夫です
ハイチは通常夕方七時になると闇が落ちる。電気がないので、近所は暗闇に浸り、草虫とコオロギの音だけ静かに聞こえるだけだ。ところが、夜11時がふわっと過ぎた時刻に、まるで光が入ってきたかのように近所が明るくなった。何が起こったのか思わず空を見上げると、雲一つない澄んだ空に満月が明るく私を見下ろしていた。濃く敷かれていた暗雲は、どこにもなかった。
私が連れている子供たちが暗雲に隠れて、今は暗い姿であっても、いつかそれらが晴れて明るく、ある瞬間、世の中の何も生み出せない明るく美しい光を人々に照らすんじゃないかな？」その子供たちの中で私より力強く働く宣教師もできて、彼らが他の人の痛みを抱きしめてくれる日が来そうだった。その瞬間、手に余る私を月の光が静かに慰めていた。私は心の中で話した。そうだね、今暗くても大丈夫。人々が君たちに指差しても大丈夫。毎日光を出そうと努力する必要もない。いつか濃い雲が晴れた瞬間、きらびやかに輝く瞬間が君たちに来るから。
私の人生でまったく晴れなさそうだった暗雲が晴れた日があった。一寸先も見られない漠然としていた時、神様はいつかその場にいて、私の人生を導いていらっしゃる神様を見つけた瞬間、私はすっかり変わった。私みたいな人を変化させた神様を思い浮かべたら、心から憂いがみんな退いて、子供たちがとても愛らしかった。子供たちは問題を起こした自分たちを諦めない私を家族よりもっと信じて従った。私たちはそんな子供たちを置いて離れられなかった。
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